大阪高等裁判所 昭和32年(う)1065号 判決
論旨は、原審が被告人に対し起訴状謄本の送達をする前に第一回公判期日の召喚状の送達をしたのは違法であり、右違法は判決に影響を及ぼすものであるというのである。
よつて記録を調査するに、なるほど、被告人に対する起訴状謄本の送達の日は昭和三二年三月八日であるのに、それより一日早い同月七日に同月二八日午前一〇時の第一回公判期日の召喚状が被告人に送達されていることは被告人のいうとおりであり、右召喚状送達の手続が刑事訴訟規則第一七九条第一項に違反することも論のないところである。しかしながら、右昭和三二年三月二八日の第一回公判調書によると、右公判期日においては原審裁判官は当事者に対し弁論を命じないで被告人に対し十分準備するよう告げた上期日の変更決定をして次回公判期日を同年四月一三日と指定してこれを告知したことが明らかである。思うに刑事訴訟規則第一七九条第一項は刑事訴訟法第二七五条刑事訴訟規則第一七九条第二項等の一連の規定とともに被告人に対し公判期日前において防禦の準備の機会を与えて被告人の防禦権の行使にいかんなからしめるために設けられたものであるから、右のような違法な召喚手続によつて開かれた第一回公判期日に裁判官が弁論の追行を命じたときは防禦権の不法制限の問題が起り得る余地があるけれども、本件のように右第一回公判期日が変更となり、しかも次回公判期日までに相当の期間を存しているときは被告人の防禦の準備に支障をきたすものとはいえないから、右の違法は判決に影響を及ぼすものではないと解すべきであり、従つてこの点の論旨も理由がない。
(裁判長判事 吉田正雄 判事 竹中義郎 判事 井上清一郎)